12月例会より

今回は、会場7名オンライン1名合計8名の参加でした。会場参加は先月より増えましたが、オンライン参加が減りました。オンラインなら

自宅からでも手軽に参加できます。オンライン未経験の方でも簡単に参加できますので、是非一度トライしてみてください。せっかくの貴重な報告ですので、多くの会員の方に聞いて頂きたいと願っています。オンラインからでも、質問や意見を出したり、討論に参加することもで

きます。

<報告①>9年間を見通す三和創造学習

~鮭・養蚕・京街道・光秀・義経伝説・学童疎開・祇園祭・ツアー企画~

報告者:吉田武彦さん(三和学園)

サブタイトルからも分かるように、それぞれに魅力のある膨大な内容の報告で、 かなり先を急いで報告されたが、それでも設定した時間では足りなかった。もっと時間をかけてじっくりと報告をしてもらえればよかった。

三和学園は、福知山市東部の過疎地域で2小学校1中学校が統合されて開校した。開校とともに三和創造学習が始まり、教育過程特例校として、3~6年で年間約50時間、1~2年、7~9年で約25時間位置づけられている。 以下、報告された各学年の実践の一部を紹介する。

【3年生の学習】

葡萄の誘因、種なし葡萄を作る作業、つぶそろえ、収穫を体験。収穫した葡萄は校内で児童が販売し、ジュースに加工したものを昨年分と今年分を飲み比べた。ラベルのデザインを考えたり図工で葡萄収穫の様子を描き、国語科の「すがたをかえる大豆」の学習では、葡萄の体験を活かした授業が進められた。

バスで三和地域を周り、19年度はおもしろ神社巡り、20年度はお地蔵様巡りをしている。絵馬や巻物、珍しい狛犬、産屋などを見て回り、地域の人たちから地域行事や文化を教えられた。

鮭の神様を祀る神社があり、民話も残されている。鮭に関わるる文化(新潟やアイヌの文化なども)を学び、鮭の卵を育てて稚魚を由良川に放流している。

昔の道具を見て使い方を教えてもらい、長田野工業団地の見学も行っている。20年度は、工場もスーパーも見学できなかったため、移動販売車「とくし丸」を見せてもらい、商品を見ながら販売者の方に質問できた。

【4年生の学習】 蚕を育て、繭から6本の糸をより合わせて1本の糸(1000~1500m) を作ることを体験した。歴史教科書に古代から現代まで、葉酸・絹織物の記述が出てくるので、そこにもつながっていく。絹織物を藍染めし、丹波生活衣館、単語郷土資料館、養蚕家から借りたり寄贈してもらったもので養蚕展を開く。

7年生では、美術科で繭人形作りをしている。

【6年生の学習】 三和町内の山城を見学し土塁、竪堀、堀切、切り通しなどを観察。京街道を3日間8時間かけて歩き、かつての宿場町、マンガン採掘跡地、 峠などを見て回った。まとめで、伊能忠敬測量隊など京街道を行き交う人たちの様子を演劇にして文化祭で発表。20年度 は、明智光秀と三和・福知山について学習した。

【8年生の学習】 京都校外学習の事前学習として、日本文化、渡来人、日韓・日朝の歴史、景観、戦争という観点から、三和地域にある関連箇所を回る。祇園祭の山鉾のわら縄を作っている製縄所で製作工程や、原料のわらの入手先の話を聞く。景観保護の場所を訪れ話を聞く。戦時中に朝鮮人が採掘したマンガン鉱山跡を訪ねる。校外学習当日は、祇園祭ギャラリー、清水焼の登り窯見学、陶器爆弾、借景のある無隣庵庭園、耳塚・方広寺などを回った。 職場体験学習は、三和地域内の事業所で実施した。

【 三和創造学習の学年の関連性】 ふるさと体感教育(1~4年生)、ふるさと活用教育(5~7年生)、ふるさと創造教育(8~9年生)と三つの学齢期に分けている。

指導書を見ながら教科書通りに教えている、教科書や資料集を子どもたちにまとめて発表させることで「主体的で対話的な学習」にしている先生 e tc も多いと聞 く 。多くの若い先生たちに、吉田さんのような実践に触れ、「子どもたちの学びとは何か」を考えて もらえたらよいのに・・・と感じ

た。小学校低学年から中学生までの連携や社会科と他教科の連携についても示唆の多い報告で あった 。三和創造学習という特例の教育課程での実践で、同じことをそのまま他校で取り入れることは難しい だろう が、部分的に、あるいは形を変えて取り入れられることもあるのではない だろう か。

<報告②> 身近な学び場をめざして

~山城社会科研究会のその後~

報告者:片桐康志さん(田辺中学校)

山城地域で、毎月、着実に参加者を集め、若い先生たちから市民の方まで幅広い層の方々が報告をされている山城社会科研究会の活動の特徴、長所と課題などについて報告された。「伸び悩む『山城社会科研究会』の本当の強みと弱みに気づき、地域の社会科研究会を発展させていくために必要なことを見つける。」という“めあて”を持って報告されたが、京都歴教協の活動にとっても、学ぶことの多い報告であった。

山城社研の歩みについて報告された後で、山城社研の3つの山城社研の3つの特徴とそれぞれの強み、弱み、工夫についてまとめられていた。

【特徴①】市民と教師でつくる研究会【特徴①】市民と教師でつくる研究会

強み:学校外からの見方・考え方を学べる。学校教育の現状に対する正しい理解を広められる。忙しい現職教職員を市民の方々がフォローしてくださる。

弱み:教育研究、授業づくりに焦点化が難しい(明日の授業に役立てたいという教師の要求に答えにくい)。市民の方には、運営への協力依頼が不可欠(市民の方には、運営への協力依頼が不可欠(趣旨にあった発言をしてもらう等)。

工夫:「教育実践の報告と研究」の例会と「教材研究のために学ぶ」例会に分ける。若い先生には、1年間に1回は自分の実践を発表してもらう。市民の方々の研究発表の場を設定する。市民の方々の意見を歓迎する。「若者を育てる」趣旨の共通理解をはかる。

【特徴②】山城地方に根ざした研究会

強み:お互いに親しくなりやすく、意見や思いを交流しやすい。集まりやすく、継続しやすい。地域や学校の実情やスケジュールに合わせて、柔軟に計画や 運営ができ、要望もかなえやすい。

弱み:内向き指向になりやすく、排他的になりやすい。マンネリ化しやすい。多面的・多角的な見方・考え方が入らないと、広がりや深まりに欠けてしまう。

工夫:仕事や用事の帰りにふらっと寄れる気軽な研究会だが、「行ってみたい」と思える値打ちのある内容の例会にする。 地域のマス・メディアで広報してもらうなど、地域の人たちとのつながりの中で広げていく。

【特徴③】自主的で、自由な研究会

強み:「学びたい」を実現する場になる。自分の思いを伝えられ、誰もが主人公になれる。参加者として平等な立場で論議できる。

弱み:自由すぎて、まとまりにくく、支えも弱い。他の意見を厳しく批判して、対立的になることもある。コアになるメンバーが少なくて、全国組織のバックがない。

工夫:違いがあって当たり前、違うからおもしろい研究会にする。違う意見や考え方を認め合い、安心して話せる、話せるからおもしろい場にする。不要な対立点を持ち込まないで「学びたい」の思いで一致する。

研究会が目指すところを理解してもらい、多く方に会員・役員・報告者になってもらう。民主的に運営する。気配り・気遣い・思いやりも大切にする。

長年、研究会の中心となって活動し てこられた報告者の、分析、率直な思い、悩み、今後に向けての考えが凝縮された報告であった。 山城社研と京都歴教協の相互連携について言及した意見も出された。ともに自主的な民間の研究会として、互いのよさを取り入れ協力し合っていけることは多々あると思われる。