オンライン全国大会 7月30日~8月1日

コロナ禍のため、初の完全オンライン実施となった歴教協全国大会に、京都からは23名もの参加申し込みがあり、うち報告者が11名でした。今回、参加者の中から5名の方が感想を寄せてくださったので、以下ご紹介します。

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参加者の感想

(氏名五十音順・敬称略)

◆全国大会に参加して                後藤貴三恵(同志社高校)

全国大会への参加は、家を何時に出て、新幹線に乗って、この駅でどこそこ行きの在来線に乗り換えて…という風に、会場に行くまでの楽しみと、会場に着いたときに1年ぶりに出会う方々との再会の喜びや、ここに来るまでにどこそこに寄って来たとかの自主的フィールドワークの情報交換、開催地の名物料理を味わったり現地見学に参加したりするなども楽しみでしたが、オンラインでの全国大会は、出かけることなく自宅でパソコンに向かって参加。手軽で参加しやすい反面、講演や報告を聞いてすぐその場で感想を言い合えたり共感し合えたりすることができないのは仕方ないことですね。

 

 記念講演「民主主義とは何か~菅政権とメディア、縁故主義~政治を変えていくために」(望月衣塑子氏)は、コロナ感染が増加している中でのオリンピック開催への批判、オリンピック開催前の森喜朗氏の女性蔑視発言をめぐる問題から菅政権とメディアについて、望月氏自身の体験も交えてお話しされ、表面だけではわからないことも知ることができました。

 

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 新聞記者は記事を書くのがうまいのは当然でしょうが、お話もうまいなぁと感激しました。そして、いやがらせされてもへこたれないタフさ(実際にはしんどいことも多いでしょうが)に応援したい気持ちでいっぱいになりました。

 地域に学ぶ集いでは、「震災10年目の宮城」(石垣好春さん)を聞きました。震災から10年経ってハード面の整備が最終段階に入っているようですが、水産業や観光業等の生業はコロナ禍等の影響もあり、まだまだのようです。「復興五輪」とは名ばかりで、被災地の「心の復興」は課題が多いとの現状をお聞きしました。

 

 2日目の分科会は第17分科会/高校に参加しました。6本のレポートが報告・討議されました。コロナ禍でどの学校も苦労しながら工夫して授業や行事に取り組んできました。私が報告した「工業の立地-この製品はどこでつくられるか-」について、生徒に書かせたものへのフィードバックはどうしたのか、公害・原発・軍事基地の立地について触れることがあるか、環境破壊につながる立地を批判的に乗り越えていく視点を提示することはないのか、実際に工場関係者になぜここに工場が立地したのか聞いてみたらおもしろいのではないか、などたくさんの質問や意見、アドバイスをいただきました。「工場関係者に聞きに行く」というのは、小学校の生活科の視点でまさに社会科の原点のようなもので、盲点になっていたなぁと気づかされました。工場見学に行きたくなりました。


◆「第三・日本近現代史分科会」に参加して      庄司春子(同志社高校)

今年度の「日本近現代」分科会は、私を含め5本の報告があり、吉田守夫氏「15年戦争のまとめの授業」、植田啓生氏「大正フェミニズムの授業」、村木真理氏「資料とどのように向き合うか―日本史Aの実践」、小川輝光氏「コロナ禍での地域学習-近現代史を中心に」、庄司「世界史から見た十五年戦争~教科書の記述を比較する」という内容でした。全体として報告は、資料活用から地域実践、国際的な学校から大学までとバランスよく多様で興味深かったです。

村木報告については、わが同僚ながら実践の全体像を聞いたのは今回初めてで、1年間の授業で138の問いを設定し、生徒に152の史料を読ませるというとりくみの熱意に圧倒させられました。資料から立ち上がる歴史こそ科学としての歴史である、という信念にもとづき、とにかく生徒に主体的に資料を読ませるとのこと。その姿勢も素晴らしいけれど、生徒のほとんどが資料を「以前より読めるようになった」「読むことが楽しくなった」「抵抗感がなくなった」とアンケートに答えていることから、授業の狙いが見事に成功していると思いました。参加者にも大きなインパクトを与え、「歴史学の本道」と称賛の声が寄せられました。来年度から資料活用と思考力を求める新科目「歴史総合」がスタートします。そのなかで本実践が、今後一層深化・発展することをたいへん期待しています。

植田報告は、大正期の女性運動を日本の市川房江らとともに朝鮮の柳寛順をとりあげて、生徒と対話しながらすすめた実践です。在籍する生徒もさまざまな国籍・背景をもっており、柳寛順にも主体的に学ぼうと意欲的な生徒もいたとのこと。ともすれば日本史では「植民地」扱い、世界史では中国中心のアジア史の脇役扱いになりがちな朝鮮史ですが、魅力的な人物像とともに実感を持って主体的に学ぶことの大切さをあらためて考えさせられました。

小川報告は、大学生対象の地域史の実践報告です。コロナ禍で研修旅行や巡検が不可能となる中、インターネットの資料などを活用して学生らと地域学習の方法を考えたとりくみです。「地域にねざす歴史教育」をかかげた歴教協の分厚い実践経験・理論をどう若い世代に受け継いでいくかという重要な課題が示されたと思いました。

庄司報告は、一昨年末に京都歴教協の部会で報告させていただいた内容で、生徒の十五年戦争認識とそれを育む教科書記述の分析です。戦争の実態解明に関する研究上の進展と、教科書に現れた戦争観の変化を、報告者がうまく整理することができなかったため、質問や議論が戦争の呼称やナショナリズムの問題に収斂してしまいました。しかしながら日本近現代史の最大の課題がこの十五年戦争史(狭義の戦争史ではなく、社会史も含めて)との認識のもとに、引き続きこの時期を対象とした教育課題に取りくんでいきたいという思いを新たにすることができました。

 

今回、発表の機会を与えていただいた京都歴教協および大会運営の役員の先生方に、あらためて感謝申し上げます。

◆第14分科会(中学校地理)に参加して    辻健司(元京都市立中学校教員)

レポートは、次の4本でした。参加者はたしか18名だったと思います。

【午前】10時~12

・分科会オリエンテーションと参加者の自己紹介

・報告①新しい中学地理教科書の分析 春名政弘さん(埼玉)

【午後】13時~17

・報告②コロナ禍の地理学習~農とくらしを見つめながら~ 辻健司(京都)

・報告③主権者を育てる地理学習をめざして 石戸谷浩美さん(東京)

・報告④問題作成を通した主体的に学習に取り組む態度の育成 加藤飛翔(千葉)

 

   は、大ベテラン春名先生による地理の新教科書4社の分析でした。4社とも力作と評価されつつ、報告時間に制約があるもととはいえ、とりわけ地誌の分析が精緻でとても参考になりました。

 ②  は、私の最近の実践で、昨年10月の例会で報告させてもらったものです。レポート本体とは別にZOOMでの発表用にPPTを作成して報告しました。

 ③  は、石戸谷先生ご自身の長年の実践をふりかえりつつ、九州地方の学習で「諫早湾の干拓事業」に焦点をあてて立場の違う住民の目から国の政策を問い直した実践で、探究型の授業づくりのポイントがわかるすぐれた報告でした。

 ④  は、文京区の公立中学校の若い先生の報告でした。新学習指導要領で観点が3つになったもとで、思考・判断・表現する場面をどのように設定していくか、教科書の最後の単元でグループごとの調べ学習と「問題作成」学習に取り組まれた報告でした。授業のねらいや評価方法、生徒の動きがよくわかる報告でした。

 

40年あまりに及ぶ教師生活をふりかえって、教材研究を一番熱心にやったのはいつかというと、教育実習をしていたとき(1976年)と定年退職してからの7年間ではないかといまさらながら自戒しています。じゃその間何をしていたのかというと、他の業務に追いまくられて教材研究は後回しになっていました。いやほんまに。

さて、今回の報告は、昨年8月~今年の3月まで非常勤で勤務した近衛中学校2年生とともに学んだ日本地理学習をまとめたものでした。これは昨年10月の例会で報告した内容と同じです。地理学習では、それぞれの地域の今の課題を取りあげながらやろうと思いました。例えば、「豊川用水にかけた農家の願いとは?」「なぜ静岡の住民はリニア新幹線に反対するのか?」「群馬県上野村の過疎対策が効果をあげているのはなぜか?」「日本の米作りの現状と課題は何か?」「北海道の「ニセコ難民」(失業した外国人労働者)へどんな支援が行われているか?」などが今回取りあげたテーマです。

そして、今回特に意識したのは第一次産業、とくに農業です。なぜか。この間にわかに政府サイドから、これからの社会はSociety5.0だとかいうわけのわからない妄想が打ち出されてきたことにカチンときているからです。国産ワクチンも作れない一方で、食料自給率を37%まで下落させておきながら、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムによって開かれるこの社会」を目指すのだとは何事か?

 けれども私自身、農業の経験はありません。生徒たちも市街地でくらしているので、米作りなんてしたことがないと思い込んでいたら、何と小学校で体験していることが判明し、びっくりするやら、そんなことも知らずにきた自分自身が恥ずかしいやら…。みっともないエピソードも交えながら楽しく報告させてもらいました。ZOOMの機能(画面共有)を生かそうと考えて、報告用のパワーポイント教材を作成しました。雑多な報告内容を限られた時間のなかでコンパクトに紹介できたように思いました。オンラインに慣れない参加者にていねいに対応していただいた世話人のかたに感謝感謝です。

◆初めてのオンライン全国大会       羽田純一(元長岡京市立小学校教員)

初めて体験したオンライン全国大会。400人超の集会をオンラインでできるのだろうか?と思っていましたが、私の知っている限りでは大した混乱もなく2日間の日程が終わりました。準備から運営まで、本部・実行委員の方々は大変だっただろうなと改めて思い、感心もしました。

 自分も、送られてきた手順や説明に沿って、いつもとは違う準備をしました。ZOOMも最新のバージョンにして下さいという連絡でしたが、送られてきた説明の通りしようとしたのですが、結局ページが開けませんでした。本部の担当の方に電話でサポートしてもらいながらやっとできましたが、どうも、ただの参加者ではなくホストもできるものになってしまったようです。

 全体会での望月衣塑子さんの講演は期待通りでした。長岡京市の9条の会でも講演にお呼びする計画があったのですが、コロナ騒ぎで流れてしまいました。画面を通じてですが、ご本人の講演が聴けてよかったと思っています。想像していたより、バイタリティー溢れた方という印象でした。でも、そうでなければ、政府にたいする不屈の追及はできないのでしょう。国会記者クラブのなかでも、一致して権力の歪みを追及するのが困難だという話から、日本のマスコミの弱点を再認識しました。マスコミ本来の姿に立ち返るよう、国民の声が背中を押していく必要を強く感じました。その中でも、支えてくれる人たちも多くいることは心強いことです。

 戸惑うこともありましたが、オンラインならではの良さもあった大会でした。一番よかったのは、事前に他の報告者のレポートがゆっくり読めたことです。レポートの内容についてじっくり考え、自分の考えもまとめ、発言の準備もできました。また、席を外せば、そこは自宅の中なので、ちょっとお茶をのんで気分転換・・・といったことも気楽にできました。大会や分科会の場と自宅が一歩で行き来できるのは、これもいいなあと思いました。

 課題は、やはり、参加者のみなさんと一同に顔を合わせて議論したり交流したりできないことでしょう。それに、2日間、パソコンに向き合っての参加は、正直疲れました。

 

 来年はぜひ、2年間先送りになってしまった愛知・東海大会に、現地で参加したいと願っています。そして、大会でお会いしてきた方たちとまた再会したいものです。体力が残っていれば、現地見学にも参加したいと思っています。

◆全国大会に参加した感想               村木真理(同志社高校)

分科会で報告させていただき、自分では思いつかないような色々なご意見をいただき勉強になりました。報告原稿の締め切りが早く、京都歴教協の例会で報告した際にいただいたアドバイスをレジュメに反映させることはできませんでしたが、全国大会での口頭報告に反映することができ、多少なりともまとまりのある報告に改善できたように思います。例会でご意見をいただく機会があってよかったなと思っています。ありがとうございました。

 オンライン開催でしたので、分科会の休憩時間等での雑談レベルでのいろいろなヒントや気づき・交流の機会がなかったのは残念でしたが、様々な報告をお聞きして学びを深め、自分自身の授業を振り返るよい機会となりました。オンラインのメリットもあると思うので(気軽に参加しやすい等)、来年度以降は現地開催+オンラインという形になるといいなと思いました。(運営側の準備が大変ですが…)

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